淫靡な蒼い月

真実



初めて味わう柔肌は、ほんのり、汗の味がした。


土曜の昼下がり、俺は、幼馴染みのあいつを、抱いていた。


映画好きの俺たちは、休日にどちらかの家でよくDVDを見る。


今日もそうだった。


二人でソファに座り、借りてきたDVDを鑑賞する。


今日のは、公開時に話題になったサイコラブストーリー。


想像していたのより濃厚なラブシーンが、俺たちに“一線”を越えさせた。


仕掛けたのは、俺


後ろからあいつを抱き、耳元に口を寄せて名前を呼んだ後、両手でそっと、その膨らみを揉んだ。


少し怖かったが、拒絶されないのは判っていた。


なぜなら、あいつも俺と同じ空気を放っていたから――


あいつは吐息混じりの声を発しながら、俺の体に体を預け、見たこともないような顔をした。


もう一度名前を呼び、座っていたソファに押し倒すと、あいつが首を振った。


「ここは、嫌。ベッドで……」


その言葉に、俺は従った。


狭いソファより、確かにベッドがいい。


ベッドで初めて唇を重ね、柔らかく絡ませる。


甘くて、たまらなくて、やめられなかった。


俺はどうしても、彼女を手に入れたかった。


全てを俺のものにしたかった。


俺の舌や指先に、あいつは想像以上に官能的な反応を見せ、俺にしがみついてくる。


俺も半分、本能に支配されている。


あいつが、何度も俺の名を呼んでは、吐息混じりの甘い声をあげる。


嬉しかった。


「すき……!! だいすき……!」


長い間、俺が想っていた言葉を、先に口にしたのは、あいつだった。


「ずっと、ずっと……! こうなりたかった……!」


あいつの長くて白い脚が、まるで蛇のように、俺の腰に絡み付き、締め付ける。


俺は、あいつに対する敗北感と、もう一人の、校内一の人気者である、完全無欠な、瓜二つの弟への勝利の美酒に、酔った。


何を失っても、手に入れたかったものを、今、手にした。


望んでいた、あいつの気持ちと共に――。






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