淫靡な蒼い月
煙草
彼が口にするものなら俺は
そのタバコにだって嫉妬する。
いわゆる“はみだし者”たちが屯する、体育館裏。
俺と彼もそこにいる。
タバコやったって、何したって、事なかれ主義な大人たちは、全員が見て見ぬふりだ。
「火、貸せよ」
彼の言葉に俺は白いもやの中から現実へと戻る。
100円ライターを投げると、彼が無駄のない動きでそれを受け取り、新しいタバコを加え、なれた手つきで火を点けた。
彼が息を吸えば、先端がオレンジ色になる。
まるで、俺の心を象徴しているように。
彼の唇に挟まれて燃え尽きてゆくタバコ。
恋に身を焦がす俺、そのものだ……。
いつかその、タバコになりたい。