淫靡な蒼い月

嵐の夜



窓を叩く雨、しなる木々。


悲鳴のような風――。


その様を、あたしは窓辺でじっと見つめている。


本当は日帰りのはずだった、今日の事前見学。


急な嵐で船が欠航になり、あたしたちは思わぬ足止めを食らってしまった。


戸惑いの表情で彼を見ながら、本当は……喜んでいた。


これでもう少し一緒にいられる。


「ここでいい?」


低予算で泊まれる場所は、こんなとこしかなかった。


彼は今、シャワーを浴びている。


あたしは部屋に入ってすぐに済ませて、今は髪が濡れているだけ。


どうしよう。


ソファに毛布持ってって、寝たふりでもしちゃった方がいいかな。


演技になら自信がある。


寝たふりの演技なら。


だってあたしたちはただの“同級生”


広いベッドにならんで眠る関係ではなくなった。


彼には、待ってる人がいる。


だけど、まだ好き。


言えないけど……。


一緒にいればいるだけ辛くなるのは判っている。


喜ぶべきじゃないって知ってる。


やっぱり、ソファで寝ちゃおう。


あたしはバスルームの音をうかがいながら、手早くベッドから毛布を引き出し、ソファに横になって寝たふりを決め込んだ。


寝ちゃえば静かに朝が来るだけ。


会話もしなくていい。


少し気まずいこの空気に耐えなくてもいい。


寝てしまおう。


昼間に歩きすぎた疲れで、すぐにうとうとし始めた頃


バスルームのドアの開く音を微かに耳にした。


そして静かに――


逞しい腕に毛布事、抱き上げられ――


熱い肌と唇と舌の濃厚な甘い波に、飲み込まれた……。

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