淫靡な蒼い月
母の歳月
わたしはどこか、おかしいに違いない。
一人きりの部屋で、そう考える。
新しく家族を迎えるために改築した家は、まるで違う香りがする。
「あ――」
夜更け、トイレに立った時、ふと二階へ上がった廊下で、聞いてしまった声。
女手一つで育てた一人息子と、その婚約者の……。
気付かれぬよう階下へ降りたけれども、胸が高鳴っていた。
いいえ、この感情は――
紛れもない
嫉妬――
許されぬ恋の果てに結ばれ、授かった息子。
しかし、苦労が祟ったのか、あの人は逝ってしまった。
息子はそんなあの人にまるで生き写し、
仕草までもが酷似する。
だから――
息子が美しい彼女を家に連れてきた時から、本当は感じていた。
――奪われる――
息子を“男”として見ている自分に気付いた瞬間だった。
おかしいに違いない。
わたし自身が生んだ子なのに
来週には挙式も控え、もう既に生活を共にしている。
「お袋を一人にできないから」
純粋な優しさが嬉しかった。
だけど、どこかで憎んでいる。
わたしから息子を奪う彼女
わたしは、どうしたらよいのだろう。