淫靡な蒼い月

勤め



それは、我が家に代々伝わりし仕事。


その家の女子、男子は十六になった夜


代々お仕えする方にその身を差し出し、その方が婚姻なされるまで、毎夜、伽の相手をせねばならない。


もちろんそこに“愛”などというものの存在は認められない。


あくまで“勤め”でならねばならない。


私は今日、十六になる。


今宵、幼い頃よりお仕えしてきた若に抱かれにゆく。


本当に小さな頃は遊び相手として、少し大きくなってからは影として仕え、従い、お守りしてきた。


しかし今宵より先は、若が将来、奥方様との初夜にて恥をかかぬよう、夜のお相手となり、お仕えする。


昼も夜もお側にお仕えするのだ。


そして若の婚姻後は、奥方様の懐妊に備え、誰かと契りを結び、次の夜伽となる相手を生まねばならない。


それが、代々の勤め。


例え他にどんなに好きな相手がいても、また、若や姫を好きになっても、死なぬ限りは避けて通れぬ道。


――若。


決して口には出せませぬが、ずっと、お慕い申しておりました。


柔肌が、熱く若を求めております。


抱いてください。


どうか――。


そして、できることならば、一生、どなたとも祝言はあげないで。


お慕い申しております。


これからもずっと――


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