淫靡な蒼い月


――なぜ?


なぜ、こんなことに?


こんなはずじゃなかった。


ただ、人肌が恋しかっただけ。


誰でもよかった。


なのに、まさか、こんなごとになるなんて……!


ああ、何てあさはかなだったんだろう。


デスクにうつ伏せで上半身を投げ出し、独りよがりな律動に耐えながら、わたしは白衣の裾を噛んだ。


誰か助けて!


お願い、この地獄からわたしを解放して!


「はぁ……はぁ……」


低俗な劣情の吐息。


わたしを凌辱し続けるエリート。


「……っ、ああ!」


加齢による速さだけが救いだ。


自分を安売りしてしまった報い……。


わたしを犯すこの男に、妻や子への罪悪感は一切感じられない。


……諦めるしかない。


この男に“切り札”を握られてる以上、今のわたしには、この現実を打開する術はないのだ。


お願い。


誰か、わたしの代わりにこの男を殺して!


意識にさえのぼらぬ、潜在的な部分で、きっとわたしはこう叫んでいるに違いない。


ただの不倫の方がまだましだ。


これは誓ってもいい。


少なくともわたしには“強姦”。


合意した覚えはない。


抗えないだけ。


だから決して“合意”じゃない。


じっとりとした男の掌に吐き気がした。


バカみたいに盛り上がってるその姿に嫌悪する。


誰か、誰か助けて!


殺して!


わたしはこんなの、望んでない!


ただ、寂しかっただけ――。


それだけ――。

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