Seven Colors


 アキラは口の端に残る僅かな唾を飲み込むと、何もない机を見つめて呟いた。


「いつ帰ったかは覚えていない。ただ」

「ただ?」

「篠町のゲーセンにいたよ、遊んでいた」


 アキラはそれだけ言うとちらと黒王の様子を伺った。黒王は手帳にペンを走らせている。そして変わらぬ表情のまま手帳をしきりにめくり始めた。

 不安げな面持ちであるアキラであるが、何一つ変わらぬ黒王の顔に肩を撫で下ろす。

 しかし、黒王がふとその手を止めた。


「格闘技のゲームでもしていたか」


 黒王のその言葉を聞いた途端、アキラはさっと青ざめた。

 何一つ不自然な要素がないように聞こえる言葉。実は大いなる矛盾を抱えており、アキラはその意味に即座に気付いたため青ざめたのである。

 ここ海町の隣に位置する篠町は小さくのどかな町である。娯楽施設といえばアキラが口にしたゲームセンター一軒くらいでコンビニすら存在しない。反対に海町には何故かゲームセンターが存在しないので中高校生はよく篠町にお邪魔する。

 その篠町のゲームセンターであるが、のどかな気風ゆえか偶然か、ユーフォーキャッチャーとプリクラとスロットしかゲームの類を置いていないのである。

 もう一度述べる。

 篠町のゲームセンターにはユーフォーキャッチャーとプリクラとスロットしかない。


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