Seven Colors
アキラの一言に、黒王は手を止めた。意外そうな表情を浮かべアキラを見る。アキラは相変わらず俯いている。
「俺は家に帰るべきだったんだ。弱っちい恐喝だったよ、気に留めずさっさと逃げ帰ることも出来た。帰っていたら、父さんは生きていたかもしれない。守れたかもしれない。俺が、俺が帰っていたら……!」
アキラの拳は固く固く握り締められていた。力の振動が腕にまで伝わり手の甲や腕の血管があらわになる。歯は欠けてしまうのではと思うほどに食いしばられており、たまにガリと歯が擦れる音がする。
黒王は元から深い眉間のシワをよりいっそう深くし、机に肘をついた。
「父親云々以前にその時間帯、まだ外にいたこと自体問題だが……。それより憎むべきは犯人ではないのか? 俺だったら殺してやりたいくらいに憤るが」
当たり前を言うかのように淡々と述べる黒王。
アキラはその警察らしからぬ一言にハッと笑い、少しだけ表情を柔らかくした。
「そりゃもちろん俺だって犯人を殺してやりたいさ。見つけ次第、容赦なく。にしても、黒王警部みたいな正義の職に就いてる人間が“殺してやりたい”なんてねー」
「俺は正義とは反対側の人間だ」
言い切られたその一言の意味がわからずアキラはきょとんとした。黒王は相変わらず冷静に構えている。
途端、黒王は手帳をぱたんと閉じると、アキラに向き直った。
「暁。手を出してみろ」
「は?」
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