Seven Colors
アキラはどこから出したかもわからない惨めな声で返事し、黒王を見た。視界に映った黒王は真剣な顔をしており、アキラは余計に混乱する。
「なんで?」
「いいから」
理由を聞かされることもなく、アキラは自分の右手を黒王の前に差し出した。冷たい机とアキラの手の甲が接触する。
平凡な手である。先程強くにぎりしめたため少々赤いが、指は五本、皮膚も普通、爪は清潔に切られている。特に拝見すべき要素はない。
すると黒王はほんの数秒だけ手を眺めた後、口を開いた。
「手から炎を出してみろ」
「はあ?!」
黒王の表情がいつにも増して真剣なためにアキラは余計に混乱した。
「待て待て、俺そんな馬鹿みたいなこと出来ねえよ!」
「でもお前はさっき、そんな馬鹿みたいなことをしていたんだからな」
アキラはハッとした。
消えつつあった“そんな馬鹿みたいなこと”の記憶が蘇る。
アキラ自身、夢か何かかと思っていた、あのときの身体。熱くないのに身体が燃えている。身体が燃えているのに自分は生きている。
あれは夢ではなかったのか。夢ではないのなら現実なのか。様々な考えがアキラの脳内で渦巻き、混ざり合う。
「心あたりがある。やってみろ、暁」
黒王のその言葉。非現実的な現実と対面し、アキラはようやく決心がついた。
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