Seven Colors

「まあな。ほら、例えばガス代の節約とか、他には」

「待ってろ」


 風と形容するのがちょうど良い程に黒王はさっと部屋から飛び出した。

 取り残された、被害者の息子でありながら一応は容疑者であるアキラは状況を把握できず、魔法にでもかかったように固まっていた。


「いいのかよ、一人にして」


 誰も答えはしない。

 扉が開いた勢いですべり込んできたほんの少しの冷気。ニット帽からはみ出している短い髪が僅かに揺れる。

 一人きりという状況に少し心躍らされるアキラであるが、特にすることもないので部屋を見渡していた。

 会議室。その割には狭く、窓も一つしかないので窮屈な密閉空間である。今は夜中で外は暗いが、果たして日が昇ったところでこの部屋は明るくなるだろうか。あまり変わらないだろう。

 この独特の雰囲気はもはや取調室である。正式に部屋の名前を変えてしまった方が良いのではないだろうか。

 特に何もない部屋を見渡し、アキラは自分の背後にあったある物の存在に気付いた。

 薄ら埃を被った、壁の鏡。アキラが立ち上がってその正面に立つと、僅かにぼやけているがアキラの顔全体が映る。


「俺、老けた?」


 問い掛けたところで鏡が答えるはずがない。

 アキラは鏡の埃を手で払い、まじまじと自分の顔を観察した。

 そして自分の顔に見飽きると、今度は鏡の前に右手の人差し指を差し出した。ぴんと天井を向く指。綺麗ではないが、平凡な指。

 その指から、小さな炎がぼんと現れる。


「ああ、そうだ。やっぱり……」


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