ビター・スイート・ラヴ
 谷川はたびたび仕事で事務所に泊まるため、簡易ベットが置いてあった。
二LDKの事務所はカメラ機材やパソコンが置かれ、いかにも事務所然とし
ていた。しかし唯一、寝室に使ってる部屋はきれいに片付けられていた。



 タクシーを降りて、しんと静まりかえったマンションのエントランスまで
真紀を抱えて歩いた。オートロックを解錠し、エレベーターで二階のボタン
を押した。



 深夜のマンションは静まりかえっていた。



 こんなところをマンションの住人に見られるのはやっかいだった。八階建
てのこのマンションを事務所として使ってる者も少なくない。



 谷川は部屋に入った途端、どっと力が抜けた。とにかく真紀を寝室のベッ
ドまで運ぶのが先決だった。



「おい、真紀ちゃん。大丈夫かい?」



 谷川の問いかけに真紀は辛うじて頷いてみせた。ベットに真紀を寝かせる
前に上着だけ脱がせた。苦しくないようにジーパンのベルトも緩めた。そし
てタオルケットを真紀に掛けて寝室を出て行った。
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