ビター・スイート・ラヴ
 夕食時に浩輔は今日、常務から言い渡された転勤の話しを由香に話した。



「良かったじゃない。ただ悪いけど、最初の数ヶ月はあなた一人で行って
ね」



 由香は冷たく言った。



「ああ、構わないよ。今回は多分長い期間、赴任することになると思うか
ら、落ち着いてから来ればいいよ」



 浩輔も無理強いはしなかった。この時点ではまだ、あさみのことは由香に
隠し通そうと思っていた。 




 その晩遅く、あさみからメールがあった。内容は次のようなものだった。




 =あなたに黙って居なくなってごめんなさい。しばらく休みをもらうこと
  にしました。その件は人事部に話してあります。仕事のほうは同僚にメ
  ールを入れてあります。実はいま旅にでてます。妊娠を告げた時のあな
  たの反応は正直に言ってがっかりしました。まさかあそこまで拒絶され
  るとは思いませんでした。やはり私達の関係は不倫以外の何ものでもな
  かったのですね‥。分かっていたけどショックでした。なのでじっくり
  考えてから結論を出そうと思ってます。わがまま言ってごめんなさい。
  またこちらから連絡します。 あさみ=




 浩輔はふーと長いため息をつき、この先どうすべきか考えあぐねた。
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