ビター・スイート・ラヴ
 由香は何気なくその様子を見ていると、その女性が顔を上げた瞬間に
目が合ってしまった。



 女性は親しげな笑みをたたえ、由香に話しかけてきた。




「こんばんは、先程からあなたの視線を感じていたのよ。今丁度、雑誌の
締め切りに追われていて原稿を書いてたところなの。家で書いていてもは
かどらないので、気晴らしにここで仕事をしているところ。いけない、私
ったら挨拶もしないで。はじめまして、浅田真紀です。」



 いきなりに自己紹介までされて由香は一瞬、戸惑ったが、慌てて自分も名乗
った。



「はじめまして、藤野由香です。じろじろ見てしまって失礼しました。
何を熱心に打ち込んでいるのか気になってしまって‥。」



 真紀はバックから名刺を取り出し由香に手渡した。



 由香はその名刺を見ながら、自分は専業主婦で買い物に来たついでに
この店に立ち寄ったことを伝えた。




「すごい、フリーライターなんですか? 憧れちゃうなぁ。専門職って‥。
どんな記事を書いてらしゃるの?」

< 6 / 206 >

この作品をシェア

pagetop