ナル男と私
アレから車の迷惑を考え、近くのマッスドナルドに入った私達。端から見たら姉弟にしか見えないだろう。見れば見るほど彼の顔は、私によく似ていた。
女の子にソックリな男の子…ではない。私の顔が、どちらかと言えば男性的なせいだ。言葉を選んでくれる人は中性的だね、なんて言ってくれるけど世の中性的と呼ばれる女子は思ってる筈だ。
私は女だぞっ!
…まぁこの顔のお陰で付き合った事も、男子から告白された事も皆無だし。その主張すらが虚しくすらあるのだが。世の中は不公平に出来ているものなのだ。
こちとら花の女子高生。
彼氏のいる友達を羨ましく思った事は、一度や二度ではない。
恋をしたい。
愛されてみたい――
ただ、悲しいかな私にはそれだけのご縁がなかった。
「で、湯島(ゆしま)君は…」
「実里(みのり)」
「へ?」
「実里でいいよ」
ニッコリと微笑む実里君は、女の私よりも愛嬌があって可愛らしい。女の子だもの、色気はなくとも愛嬌はある筈だ。そう思っていたのに、あっさり男子に負けるなんて…
その事実にへこみながらも、私は彼に疑問をぶつける事にした。
「実里君と私…どっかで会った?」
会ってるなら、あちこちで噂になっていた事だろう。むしろその時に気づかない筈がない。
「会ってたよ」
「へ?」
思いもよらない答えに、顔が持ち上がる。
「毎日鏡の中で…ね」
ウットリと囁かれた言葉に、全身おぞけたつ。
「っ」
こ、この人もしかして――
「一生会えないかと思っていた」
白く華奢な指先が、私の頬を優しく撫でる。
「愛しい愛しい、もう一人の僕」
―――ナルシストだっ
。