イノセント・ラヴァー *もう一度、キミと*
(美咲姉ちゃんはあたしに赤ちゃんがお腹にいることを話してくれたのに、あたしは何もできなかった)

(あたしが誰かに話していれば、何か違ったかもしれない)

(あたしがアクションを起こしていれば、美咲姉ちゃんは死なずに済んだかもしれない)


ずっと一緒に当たり前のように暮らしてきた家族を失う喪失感は、本当に耐え難いもので。

何年もかかっても、「美咲姉ちゃんはもういない」という状態になかなか慣れることができなくて。

いまだに、時々ふとしたことで思い出して泣きたくなる。そんな状態だったから。



――そして、拓海も。

出産時のトラブルで脳に障害を負った、とお母さんは言ってた。

もともと五体満足だったのかもしれない。



美咲姉ちゃんは年が離れていたこともあって、忙しいお母さんに代わってよくあたしの世話をしてくれた。

まぁ喧嘩がなかったとは言わないけど、よく遊んでくれて、頼りになるお姉ちゃんだったのに。


あたしはただただ何もせずに、死なせてしまった。


――お母さんとお父さんの、たった一人の本当の娘を。
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