六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
ずきずきと、胸が痛んだ。
まるで、傷をえぐられるような感覚に陥る。
『誤解なのよ。
それを伝えなさい。
貴女は彼に向き合う義務がある』
「義務……?」
『貴女は、彼の心の壁を、一枚溶かしたのよ。
わかるでしょう?』
思い出したのは、綺麗な涙。
純粋な、雫。
母親にすがるような、頼りない肩。
寂しさを埋めるようにした、キスのこと。
『絶対、忘れない』
『ありがとう』
『許してくれ』
消えてしまいそうな声が、耳元でした。
あれは、全部……。
きっと、全部、本心だった。
「……偶然だよ……」
何故か、涙が出ていた。
泣きたくないのに、次から次へと溢れ出す。