六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
「偶然、あの人が誰かに言ってほしかったことを、口にしちゃっただけで……
あたしじゃなくても、良かったんだよ」
うつむいてしまったあたしの頭を、温かい手がなでた。
『その、偶然をね……
私達夢見姫は、【運命】と呼ぶのよ』
その言葉に、顔を上げる。
お母さんは、優しく微笑んでいた。
『彼は苦しんでる。
ご両親の恨みを晴らすべきか、自分の心に従うべきか。
ただでさえ、自分が知らない自分に次々と出会って、
不安定だった彼の心は、本当に壊れかけている』
「そんな……」
『誰かを救おうだなんて、思わなくていいの。
貴女はただ、彼を……
素直に、愛してあげて』
それが、あたしにできることなの?
あたしで、いいの?
そう問いかける前に、
意識は鉄格子の中へ戻ってきてしまった。