六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
「一旦静まれ!結界の維持に努めろ!」
滋の声が砦じゅうに響き渡り、忍達は事態の収拾に走り始めた。
「裏切り者めが!!
一族の血を流すとは、どういうことだ!!」
訊ねられた瑛さんは、すとんと滋の前に着地した。
「お前達は手を出すな」
滋が、他の忍に指示を出す。
「誰も流血してない。
見てみろ」
滋に対する敬語を捨てた瑛さんが、倒れた忍達を指さした。
「睡眠薬を塗った吹き矢か……
一体何がしたいんだ?瑛」
怒りを抑えた声が響く。
その声に、瑛さんは平然と答えた。
「……こいつは、渡さない」
紫色の瞳が反抗的に輝く。
「なんだと……?」
「まりあは……音羽家に、帰す」
「ふざけたことを!
血迷ったか!」
怒鳴った滋の前に、
瑛さんはあたしをかばうようにして立ち向かう。