六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
「大丈夫だ」
「!!」
あたしをしっかりと支えたのは、
見た目よりずっと力強い腕と、クセのある声だった。
「あ、……」
見上げれば、今夜の満月と同じ銀色の髪。
そして、待ち焦がれる夜明けの紫色の瞳。
じわ、と自然に胸が熱くなり、涙が溢れそうになった。
「瑛さん……」
「遅くなって、すまなかった」
名前を呼んだその人は、またあたしに謝った。
「何の真似だ、瑛!!」
足元から声がして、あたし達の視界に蜘蛛の巣が飛び込んでくる。
あたしとアキちゃんを難なく捕らえたその白い網を、
瑛さんはあたしを抱いたままヒラリと避けて、跳んだ。
すると蜘蛛の巣だけでなく、お札や苦無まで飛んできた。
瑛さんはそれを避け、高い柱の上を跳びながら移動する。
「やあああ、高い!怖い!」
そんなあたしの叫びは聞こえないようだった。