六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】


「瑛様……!!」


滋の横に、琴さんが駆け寄ってきた。


その目には、涙が浮かんでいる。


「瑛様、もうよして。

冗談ではすまされませんよ」


「……すまない、琴。

冗談などではない」


「瑛様」


「俺は一族を裏切ってでも、守りたいものができた。

それは……お前じゃない」


滋に対する声より、それは少し苦しげで、優しかった。


「親代わりとして面倒をみてくれた、

お前の母には感謝している。


俺なんかを許婚として、支えてくれたお前にも」


琴さんのお母さん。


もしかして、夢の中で、幼い瑛さんに話しかけていた、

あの女の人のことだろうか。


いや、そうに違いない。

あのひとは琴さんにそっくりだもの。


「ならば……」


「すまない。

俺のわがままだ」


瑛さんはまた謝る。


しかしそれは、謝罪ではなく拒絶だった。


< 558 / 691 >

この作品をシェア

pagetop