死神少年
「いずれは死ぬだろうな」
ただ冷たく感情のない声しか、その時は出せなかった。
それが真実なのだから。 彼女が死ぬ、それは誰にも変えようのない事だ。
真実を変える事など誰にも出来やしない。
だからこそ、真実は受け止めなければならない。 受け止めようとしない人間を、俺は今まで何度も見てきた。
でも結局、皆最後は認めるのだ。
人間には認めることしか、出来ないから。
「私はあと何日生きられるの?」
女はまるで他人事のように、尋ねる。
果たして彼女が真実を受け止めているのか、いないのか、死神の俺には分からなかった。
「言えない」
本人に限り、死神が人間に死期を明かすことは、その人間が死ぬ時間から24時間以内となっている。
「今は、まだ言えない」
「そう」と彼女は小さく笑う。
「医者は半年なんて言ってるけど、きっとそれよりずっと短いんでしょう?」
「さあね」
ふふっと女の透き通る声が病室に響く。
「なんだ」と俺は不快に尋ねる。
「嘘、つくの下手なんだね、あんた」
「……さあね」
俺は林檎を戻すと立ち上がり、女に背を向ける。 病室を出る時、頭の隅に女の寿命が過ぎった。
――あと37日