遊びじゃない

やっぱりそうきたかとある程度予測していた私は、ゆうを待っていた間一生懸命考えていた脅しを口にする。

「早く言わないと、あんたの大切なうちの部署の瀬川女史と社食の上野さんにコンタクトレンズをお勧めするわよ。」

眼鏡女子フェチのお気に入りの二人。社内でこの二人の眼鏡姿を見られなくなるのがきっと一番堪えるはず。

「どう?」

「…そんなぁ…。」

不敵に微笑む私に向き直ったゆうは、この世の終わりみたいな顔をしていた。



「ごめんねぇ…余計なコト言って…」

最早半泣き状態のゆうは、説明の間にも懺悔のように生ビールをあおり、話し始めて30分…今や完全に出来上がっていた。

滑舌が悪く、要領を得ないゆうの話を整理すると、やっと私にもゆうの言動の意図が分かって。

カウンターに突っ伏してむにゃむにゃと言葉にならない呟きを繰り返しているくせっ毛頭をポンポンと軽く叩きながら、じんわり胸が温かくなって「ありがとう」と口から零れる。

きっと、もっと早くから結末をわかっていたはずの男が、どれだけ悩んで、私のことを考えてくれたかを思うと、今日はやっぱり私が奢るべきなんだろうなと思わず口元が緩む。
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