遊びじゃない

「早すぎ、だしっ。」

玄関ホールなんて洒落たものがないこのアパートでは、チャイムが鳴ったらそれはすぐドアの前に訪問者がいるってことで。

床に置いてあった雑誌を纏めてテーブルの下に置いていると、急かすように今度は2回続けてチャイムが鳴らされる。

「あ~もう、わかってるって。」

草食系でも意外にせっかちなんだな、とか思いながらドアを開けると一目で走ってきたとわかるゆうの俯く姿。

ドア横の壁に手を付いて俯き、荒い息とともに肩を大きく上下させて、ふわふわの前髪は無残にもオールバックになっている。

「…別に走ってこなくていいのに。」

軽く息を切らして居酒屋に登場することはあったけど、どうみてもこれは命がけの全力疾走で。

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