遊びじゃない
「…だって連絡先さえ知らないだろ?」
その言葉に連絡を取ろうとしてくれたんだと嬉しくもなり、私はすっかり忘れていたんだ。
「お取り込み中すみませんが、私とこの可愛いベビーがお腹を空かせて吐きそうなんですけど。」
私たちの間に挟まるように登場した空腹時不機嫌症の妊婦、美織ちゃん。
彼女が言うには、妊娠中の空腹感は尋常じゃなく、震えが出るくらい吐きそうでイライラするらしい。
さっさとしてよ、と言わんばかりに麻生さんのことも睨んでいる。
「おっと、それはごめんね?…じゃあ、コレに連絡してよ。」
苦笑いしながら内ポケットから取り出した名刺を私に握らせて、もう1度、ごめんねと言いながら去っていった。
…よほど美織が怖かったみたいね。
私の手の中の名刺と私を代わる代わる睨んでいる美織とのランチを考えると、私も逃げ出したいくらいなんだけど。