遊びじゃない

顔に触れる清潔感のある薄いストライプのシャツからは麻生さんの香りがして、このまま抱きついてしまいたい思いにかられるところを、ふわふわの頭でなんとか自制する。

「ごめんなさい…また、酔ったのかも。」

さり気なく胸を押して離れたつもりが、クスクスと笑い声が上から降ってきて、やっぱり抱きとめられてしまう。

「また飲ませすぎたね。その足じゃあ、周りの人もしょうがないって思ってくれるよ。」

そんなに酔っ払いに見えるのかと恥ずかしくて余計に顔を上げれずに、そのまま麻生さんにもたれて出口まで歩く。


「ありがとうございました。…大丈夫ですか?」

コートを手渡してくれながら、オーナーが私を覗き込む。

全く…ほんとに情けない。

しかも、オーナーも多分歳はさほどかわらない若さで、麻生さんに勝るとも劣らない遊び人風な空気を醸し出している。

「大丈夫です…すみません、ご迷惑おかけして。」

謝るたびに情けなさと頭の回転が増すような気がして、麻生さんに促されるままそそくさと店を出る。
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