届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…
「…。」
言葉にならない。
両手でハンカチを取り涙を拭った。
「…帰って…いいぞ。」
かみ締めるかのように、男は口を開き立ち上がった。
大きな目を倍くらい大きくさせ、驚きながら男を見る。
「ありがとう。」
そう言いながら立ち上がり、男の前まで歩いた。
そっと両手で男の手を取り
「ありがとう。」
小さくつぶやきながら震えていた。
ポタ…
ポタ…
握り締められた手に、流れ落ちた涙がとても温かく弾け散った。
スルッと手をほどき、震える肩を支えながら警察署の玄関口まで送ってもらった。
ずっとあたしの震える背中を心配しているようで、玄関口で立ち尽くしながら見送ってくれた。
あたしは警察署の門まで行くと振り返り、何度もお辞儀をしながら帰って行った。
くるりと警察署を背にすると、ぺロッと舌を出し小さくVサインをした。
まさか、あんな誰も信じないような嘘にダマされるとは…。
バカな警察官。
でも…どうしてだろう?
忘れていたあの人を思い出させるのは…。
キュンと胸の奥に閉まってあった何かが、切ない痛みを響き始めた。