新撰組のヒミツ 弐
自分を戒めながら敵を睨み、光は先手を打って斬りかかった。一撃は悠々と受け止められ、弾かれる。純粋な腕力の差だ。
刀を弾かれ、体勢を崩した瞬間、凄まじい衝撃に身体を吹き飛ばされ、息が出来なくなった。立花の渾身の蹴りが鳩尾に入ったらしい。重い、重い一撃だった。痛いという生温いものではない。
力を振り絞って立ち上がろうとする光にも立花は容赦は無かった。光を再び蹴り飛す。壁に背中を打ち付けた光は思い切り咳き込んだ。
「死ぬのはお前の方みたいだが?」
無精髭に囲まれた立花の口元には挑発的な笑みが浮かんでいる。痛みに顔を歪める光を見て笑みを深めた。
光は息を整えながら、反撃の機会を窺っていた。このままでなるものかと、光は足をなんとか立ち上がり、刀を拾って構えた。
間合いにぐっと踏み込み、素早く斬りかかる。読まれていたように躱される。光は歯噛みしつつ、激しい斬撃に耐えた。
「……っ!」
突然、奴の巧みな足捌きが崩れ、体が右に居着いた。今だ、と隙を突いた斬撃もまた寸前で躱された。
「隙をついたのに、残念だったな」
「ああ、残念だよ!」
油断したその顔にクナイを投げる。とっさに飛んで避けた立花に光は笑った。相変わらず軽々とこなしてくれる。
──だが、二本目はどうだ。空中の不安定な姿勢では避けられまい。たとえ二本目が躱されたとしても、着地した瞬間には隙ができる。そこを刀で斬る。
しかし、分かっていたことだが奴は甘くない。空中で体を捻ると二本目も躱される。いっそのこと曲芸師に転向しろと内心で舌打ちをした。
(肩を怪我した疲労困憊の状況でこの男に勝てる、と思うのは考えが甘い。そんなことは分かっているが……)
「どうした、考えている暇があるのか」
立花の声とともに、白刃が目の前に迫っていた。