新撰組のヒミツ 弐


「仇に辿り着いた気分はどうだ?」


立花は唇の端を上げた。
面白くてたまらないといった顔をしていた。
この男は知っていて黙っていたのだ。光も人のことは言えないが、奴もなかなかに性格の悪いやつだから光の反応見て嗤っていたのだろう。


この男を友と誤認していた頃の自分が情けないと思ったが、どうやら光の推論は間違いではなかったようだ。


「……私を都合よく利用したのは気に食わないが、それだけだ。先生も、組織を脱するなら命の危険は覚悟の上だっただろう。復讐なんて望むはずもない」


自分で話していて不思議な心持ちだった。心は思っていたより揺れ動かなかった。憎しみも湧き上がってこない。


なにより、新撰組の一員として彼らと共にある気持ちが光の心を静かにさせていた。昔の独りだった光とは違う。


「もう、過去に囚われる理由はないと思っている。私がどう生きるかは自分で決めることだ」


静かな心持ちで立花の視線を真っ直ぐに見つめ返した。


「……そうか」

立花は表情を消した。雰囲気が変わった、そんな気がした。


「しかし、俺とお前、どちらかが死ぬ道しかないようだな」


今までにないほどに冷ややかな声で、立花も刀を抜いた。


光は殺気を感じ、立花から目を逸らさず刀を握る手に力を入れる。


どちらかが死ぬ、戦場で敵対するもの同士が刀を合わせればどちらかが死ぬだろう。その当然の言葉が光に刺さる。


(私は何を考えている……。奴を倒さなければ私が死ぬ。都を焼き討ちしようと計画した男だぞ)


今の世の中は命をかけて思想の違いを訴える時代。躊躇いは不要であり、その躊躇いは光を殺すことになる。
< 100 / 102 >

この作品をシェア

pagetop