新撰組のヒミツ 弐
「よし、気ィ張って行くぞ!」


声高に張り上げる声が夜の闇に響く。


「応!」



隊士たちの上げる声が原田のそれを覆い隠し、門の前に並ぶ隊士たちは、さらに気合いが増したようだった。


その場にいた隊士たちと同じく、「応」と控えめに言うと、その様子に気付いた原田が大口を開けて光の背中をバシバシ叩く。


「……あの、痛いです」


力加減というものを知らないのか。


力に任せて叩いているあたり、いつもこの様子なのか、と隊士に目をやると『またか』という苦笑と同情交じりの視線が送られる。


「何だよ、つれねえな! こういう時には腹から声出すモンだぜ。気合いが入んねえようじゃあ、やれるモンも出来やしねえ」


──気合いでどうにかなるなんて、漫画やゲームの世界だけだろうに。やっぱりこの人とは何かがズレていて合わない。


光はそんなことを思って苦笑いした。


「……ははっ、いえ。気合いは十分なのですが。どうにも夜と言うことですし……八木邸や前川邸の方々へご迷惑をお掛けするのでは……」


「夜がどうした! 男ってのはなァ──」


それから彼は持論をひとしきり述べ、更に苦手意識を光に植え付けると、今度こそ隊の先頭に立ち、京の街へと足を運んだ。




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