新撰組のヒミツ 弐
光たちは目にも鮮やかな浅葱の羽織を目印に戦っている。


なるべく捕縛を目的としているが、敵もさる者、「捕まるぐらいなら」と刀を取って戦い、抵抗する者が大半だった。


こちらは精鋭で、一対一で挑めば勝てるだろう。しかし、敵が律儀に順番を待ってくれるとは思えない。


圧倒的な数の差もあり、乱闘になると捕縛をしようとする余裕すらなくなった。そっちがそのつもりなら構うものか、と光は背後から襲ってきた浪士の喉を掻き切る。


その間、懲りもせず窓から二名ほど飛び降り、逃走を図った。その下は安藤たちが守っている中庭だ。実戦に慣れていない者たちにあまり負担は掛けたくないのだが、どうしようもない。


(数は減ったが……さすがにこの人数を三人で抑えておくことは出来ないな……)


光たちが入ってきた戸からもかなりの数が逃げてしまった。ここに残った浪士はあと二人だ。恐らく、今は下の方が人数が多いだろう。


下の人数だけで敵に対処出来るだろうか、と思っていたその時、近藤が「私は下に行く! 二階は任せたぞ!」と行って逃げた浪士の背中を追い、階段を駆け下りていった。


(……厄介だな)


光は軽く上がった息を整える間、目の前で構える浪士たちとにらみ合う。逃げも隠れもせず、また相手の力量を冷静に量ることができるとは、強い覚悟を持った腕に覚えのある敵なのだろう。


さて、どう戦うべきか──と握る柄に力を入れつつ戦法を考えていたところ、突然、横にいた沖田が膝から崩れ落ちた。


光ははっと息を呑み、思わず切っ先を下げてしまう。だが、その隙を敵が見逃すはずもない。
< 90 / 102 >

この作品をシェア

pagetop