新撰組のヒミツ 弐
二人が斬りかかってくるが、沖田が倒れている以上、光が避ける訳にもいかない。
一人の刀を受け止め、押し返す力に任せて斬りつける。沖田を斬ろうとしていたもう一人を斬り伏せた。
残った男たちを威嚇しつつ、光は横目で沖田の様子を確認する。彼の顔色は蒼白で、唇にも色が無い。突入するまでは確かに滝のような汗を掻いていたのに、今は全く汗を掻いていないのもひどく不自然だ。
(──熱中症、か? 夜だが、ここは蒸し暑い……)
「しっかりしろ!」
声を掛けるが、何の反応もない。
どうやら気を失っているようだ。
手段を選んでいられない。今度は光が浪士たちの隙をつき、沖田の片襟を掴むと引きずるように敵から遠ざけた。その間も敵から目は離さない。
光は刀を構え直すと、沖田を庇う位置に立ち、直ぐに敵に向き直った。
残りの敵は二人。上背のある若い男と、その横にいる大柄な体格の男である。
そのうち、若い男が「宮部さん」と隣の男に声を掛けた。
緊迫した戦いの場に響いた、若いが低く落ち着いた声。光ははっとする。顔は初めて見たが、声は聞いたことがあった。
一度目は立花に会ったとき、二度目は浪士たちの会合を調べに行ったときだ。
そして、その男が発した「宮部」という名前。あの大柄の男は、名の知れた肥後の尊攘派浪士宮部鼎蔵(みやべていぞう)ではないか。
「何だ」
「この者は立花が仲間に引き入れようとしていた。相当腕が立つのだろう。貴方は下がっていてくれ」
相手が年上にも関わらず、傲慢で不遜な口調。だが、確かにその姿、立ち振る舞いは堂々としたもので、どこか土方を彷彿させる。
宮部は「あの男が──」と漏らし、光に値踏みする目を向け、静かに刀を下ろした。
この若い男は、かの有名な宮部鼎蔵よりも腕が立つというのか。光の表情は険しくなり、思わず刀を構える腕に力が入る。
一人の刀を受け止め、押し返す力に任せて斬りつける。沖田を斬ろうとしていたもう一人を斬り伏せた。
残った男たちを威嚇しつつ、光は横目で沖田の様子を確認する。彼の顔色は蒼白で、唇にも色が無い。突入するまでは確かに滝のような汗を掻いていたのに、今は全く汗を掻いていないのもひどく不自然だ。
(──熱中症、か? 夜だが、ここは蒸し暑い……)
「しっかりしろ!」
声を掛けるが、何の反応もない。
どうやら気を失っているようだ。
手段を選んでいられない。今度は光が浪士たちの隙をつき、沖田の片襟を掴むと引きずるように敵から遠ざけた。その間も敵から目は離さない。
光は刀を構え直すと、沖田を庇う位置に立ち、直ぐに敵に向き直った。
残りの敵は二人。上背のある若い男と、その横にいる大柄な体格の男である。
そのうち、若い男が「宮部さん」と隣の男に声を掛けた。
緊迫した戦いの場に響いた、若いが低く落ち着いた声。光ははっとする。顔は初めて見たが、声は聞いたことがあった。
一度目は立花に会ったとき、二度目は浪士たちの会合を調べに行ったときだ。
そして、その男が発した「宮部」という名前。あの大柄の男は、名の知れた肥後の尊攘派浪士宮部鼎蔵(みやべていぞう)ではないか。
「何だ」
「この者は立花が仲間に引き入れようとしていた。相当腕が立つのだろう。貴方は下がっていてくれ」
相手が年上にも関わらず、傲慢で不遜な口調。だが、確かにその姿、立ち振る舞いは堂々としたもので、どこか土方を彷彿させる。
宮部は「あの男が──」と漏らし、光に値踏みする目を向け、静かに刀を下ろした。
この若い男は、かの有名な宮部鼎蔵よりも腕が立つというのか。光の表情は険しくなり、思わず刀を構える腕に力が入る。