しろくろ
「煉ちゃん大丈夫?」
慌てて煉邪に近付く楓。その手が肩に触れた瞬間、何か、言葉では言い表せない嫌な予感、空気、雰囲気、未来が頭の中に叩き込まれるような衝撃が煉邪を襲った。
「──っ!!ぐぁアあ!!」
肩に置かれた楓の手を振り払い、頭を抱えて悶える煉邪。
今までに見たことのないようなその姿に楓は唖然とした。
「っ、れ煉ちゃん!!?どうしたの!!大丈夫!!!?」
「アァ──ぃぐぁ!!」
呼び掛けても反応はなく、痛みに耐え続ける煉邪。いつも楓の呼び掛けに余裕で答える煉邪しか見ていない楓はどうしていいかわからず、ただ見守ることしかできない。
「私は城に戻って医者を連れて来る!!楓ちゃんはそこにいて!!!」
迅速にかつ的確に対応をし、紅葉はその場を離れた。
楓はただ涙を流すしか出来ない。漆黒の瞳から大きな雫がポロポロと流れていた。
──煉ちゃんがこんなに苦しんでいるのにどうして私は何も出来ないの!?
そんな思いのみが頭の中をぐるぐると巡り、その果てに1人の男が見えた。