あのこになりたい
「やっぱり…」


その人は少し安心したような顔で笑った。


「なんで…すか…」


私は戸惑いながら聞いた。

彼は、兄の同級生だった。


中学までは同じ学校で、高校は兄が落ちた学校に通っていたそうだ。


「あ〜あの宿題写しに来てた…!」


私は彼の話を聞きながら兄が小学生の頃、毎年8月31日になるとやって来ていた、日に焼けた天パの少年を思い出した。


「その覚え方はないだろ…」


彼は少し笑った。


笑うと現れる片方だけの八重歯がかわいい人。


「なぁ…岡田元気…?」


この彼の様子だと多少は兄の身に何が起きたのかは知っているようだ。


「元気とは…言えない」


私は、静かな声で言った。

「学校は…?」


「2年の途中から行ってないし…今はこの先の進路なんて考えられる状態じゃないよ」


私は、そう答えた。


「そっかぁ。岡田にはガキん時の借りがあるからなぁ…」


彼はそう言って自分の頭を少しなでた。


「宿題の…?」


「またそれを言う」


彼はまた笑った。



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