あのこになりたい
私はいつの間にか眠ってしまったらしく、朝、目が覚めるとシュンはいなかった。


下へ降りると、母がいた。


「シュンは…?」


私が聞くと、


「お兄ちゃんが朝早く出かけたって聞いて、急いで出て行ったのよ…」


母が答えた。



「いつ…?」


「今さっきだけど」


私は部屋に戻って、ジーンズに履き替えて、上はパジャマの上からニットの上着をはおってマフラーを巻きながら玄関へ向かった。



「咲…あなたは家にいなさい…万が一あなたまで…」

母が不安な顔をした。



「私が最初に守った命だから。行かせて…」


私が言うと、


「気をつけてよ!」


と母は言った。



若菜さんの家が見えた。


兄がいる。



「殴って気が済むなら俺を殴って下さい。思う存分殴って下さい。若菜さんとのこと許して下さい」


兄は若菜さんの父に突き飛ばされた。



兄はそのまま地面に土下座した。



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