あのこになりたい
「大きくなったら父さんから母さんを守ってやらなきゃとか思ってたんだけど…その前に母さんは自分を守ってくれる人を見つけて、出て行ったんだよ」


シュンは寂しげな様子はなくむしろ穏やかな表情だ。


「つらくなかった…?」


私は、少しかすれた声で聞いた。



「最初は恨んだり、寂しかったり…。母さんは僕より自分が大事なんだ、捨てられたんだって。でも、大きくなるにつれて色んなこと考えるようになって。その後父さんは俺を男で一つで育ててくれたし。コンビニ弁当はダメって学校から言われたら、遠足の日は早起きして弁当作ってくれたり…」


私は黙って話を聞いていた。


「父さんは自分のせいで俺から母さんを奪ってしまったことを後悔してたんだよ。だから恨みきれなかった。母さんだって一人の人間で女なんだから。俺のために父さんに殴られても我慢してただ苦痛な人生を送るより大切にしてくれる人と生きる方がよかったんだよ…」


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