烏鎮(うーちん) 上海水郷物語2

王孔明

「はじめまして王孔明です。おばあさんの形見を
届けていただいて本当にありがとうございました」

流暢な日本語だ。静江は軽い食事をご馳走になった。
孔明は今29歳、来年大学院を卒業して米国のIT企業

に就職が決まっているとのことだ。静江は雲南省の旅
の話しをした。日暮れ前に、

「旅館まで送らせてください」
孔明は静江にそう言って母の了解を得ると姉妹は
笑顔で送り出してくれた。

二人は狭い石畳を並んで歩いた。
「静江さん、本当にありがとう」
「いえいえ、手紙の内容分かりました?」

「ええ、カタカナは難しいですが、もう10年学んで
ますから。母には少し脚色して伝えました。あの戦争
の時、死にかけていた祖母から、この娘にこれを届け

てくださいと頼まれて静江さんのおじいさんに手渡さ
れたと。実際祖母は重い結核で死にかけていました」
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