call my name
あたしは人見知りだ。
重度ではないけれど、知らない人に自分から話しかけようとは絶対にしない。
話しかけられればそれに対する受け答えはする。
それだけだ。
大学生になって少しは慣れたけど、それでも未だに緊張してしまう。
それに、祐輔や奈々美は県内出身のため、同じ高校の友達や中学が同じだった人達が全学にも多い。
前にも言ったけど、あたしは一人でこの大学に進学したため、知り合いは一人もいない。
先輩がいる、ということもないと思う。
調べようとも思わないのだけれど。
一般教養という科目の講義では、すべての学部が一緒に講義を受ける。
全学部が一つのキャンパス内にあるということがこの総合大学の強みらしい。
ここで多くの人は知り合いを作ったりしていた。
しかしあたしは、同学の友達と同じ講義を受けていたため、知り合いを増やそうとも思わなかった。
特にこだわりは何もないけれど、それで不自由もないし、支障が出るわけでもなかった。
それでいいんじゃないかな、とも思っていた。
練習の途中、あたしたちが使用しているグラウンドの反対側では、全学のサッカー部が練習の準備をしていた。
それほど意識しているわけではないが、練習する部活が医学部か全学なのかということは毎回確認している。
医学部なら知り合いがいるので、たまに話したりしている。
地方の国立総合大学ということもあり、加えてさっきも言ったように一つのキャンパスにすべての学部が存在しているため、ラグビー部とサッカー部の練習時間が被ることが多い。
さらに、医学部という特色からなのか、医学部だけの部活がそれぞれ存在している。
トーナメントやリーグも医療系の大学が集まるものがあり、それに参加している。
サッカー部で言えば、関西トーナメント、近畿トーナメントなどがある。
そして一年で一番大きな大会は、8月の夏真っ只中に開催される西医体と東医体である。
大学の位置関係上、あたし達の部活は西医体に参加する。
その大会に向けて一昨日から強化練が始まった。