cafe au lait
四角い鞄を持ち上げて、もう一度腕時計を確認する。時間通りだ。
薄いガラスが張られた木の扉を開くと、チリンチリンと呼び鈴が鳴る。
「ありがとうございました」
扉が閉まる前に聞こえる声に、後ろ髪を引かれる。毎朝の日課なのに、ここを出ていく時は少し切ない気持ちになる。
だって、毎朝お客さんが私しかいにいから……
その切なさを飲み込み、私は田舎の道を歩く。
田舎の中でも、ここは駅前だ。 それなりに車や人の往来がある。
道の隅には雑草が青々と繁り、小さな蕾をつけた雑草も生えている。 それを踏みつけないように、四角い鞄を抱えて慎重に歩いていく。
十分程そうして歩くと、人とすれ違うことがなくなる。車とすれ違うことも少なくなり、静かな道は閑散としている。さすが田舎。