[短編] 昨日の僕は生きていた。
「約束してんの!」

 由紀子が熱さで赤くなった顔を香織のほうに向けて、首をかしげた。

「約束? どんな?」

「私が死んだら、二人乗りするって。――今度は私があいつを後ろに乗せるのよ! 今からやっとかなきゃ、体が鈍っちゃうでしょ!」

「……はぁ~!?」


 キッ、とブレーキを踏んで止まると、途端に町を熱く照らす太陽が香織を射した。

 “彼”に告白された日も、こんな暑い夏だった――香織は思いだし笑いを浮かべる。

 急に止まった香織をいぶかしる由紀子に聞こえないように、彼女は小さく呟いた。

「最高に幸せになったら、あんたの所へ行くからね……雪彦」

 空が笑った気がした。

 今でも彼女の鞄には、幸せそうな二人が写る“あの”写真が入っている。



[完]
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