[短編] 昨日の僕は生きていた。
 カミングアウトすると、僕は高校に入学したての頃、軽く苛められていた。

 苛めといっても、友人達はただヘタレな僕をからかっていただけだと思うけど。

 ――いわゆるイジられキャラだった僕。

 そんな僕は同じクラスの秋野さんに片思いをしていた。

 秋野さん。
 香織ちゃんの事だ。

「あっ、これ懐かしい」

 昔の思い出に耽っていた僕が発見したのは、床に転がっている手帳。

 昔、日記として使っていたんだ。

 母さん達が片付けしている時に出てきたのだろう。

「見られてないよな……」

 パラ、と控えめにページを捲る。

 懐かしい。
 香織ちゃんに片思いしていた頃からつけ始めた日記。

『7月8日 (金)

 なんと秋野さんに声を掛けられてしまった! 緊張した。心がドドンパだった。 休み明けも話せますよーに』

 初々しいな……。
 若干恥ずかしいし。ドドンパって何だよ。

『7月9日 (土)

 休み。学校なくてつまらない。』


 あの頃の僕は全て香織ちゃんで一杯だった。
 香織ちゃんに会えない休みの日は、過ごす意味がまるで無かった。
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