[短編] 昨日の僕は生きていた。
 秋野さんこと、香織ちゃんと恋人同士になれたのは高校2年生の夏。


 ヘタレのレッテルを貼られていた僕が、なんと自分から告白したのだ!

『秋野さん! 僕と付き合って下さい!』

 こんな感じでね。

 絶対フラレると思ってたんだけど、香織ちゃんは満面の笑みを浮かべた。

『いいよ。あたしもあんたの事、気になってたから』


 思い出しただけで嬉しくなる。
 香織ちゃんの尻にしかれながらも、一緒に歩んできた1年半。

 もう未来はない。
 ――なぜなら僕は、もう死んでいる。


「香織ちゃん、これから学校か……」

 彼女もそろそろ準備が出来ただろう。さっそく香織ちゃんの家へ向かう。

 ちょうど登校時刻だ。

「あっ、香織ちゃん!」

 坂を登る香織ちゃんを発見する。

 彼女の長いストレートの髪が風に揺れていた。
 (ちなみに彼女は仲間由紀恵ヘアーと自称している)

「おはよう!」

「話かけないでよ。私が独り言を言ってるみたいじゃない」

 確かに。
 香織ちゃん以外に僕の姿は見えない。

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