墓場が似合う女神へ手を伸ばす
私も好きですから、とあどけなく笑う彼女。そこに悪意はない、あるのは善意と何気なくのみ。
けれども聞き手の耳につっかかったのは、『昔から』といった長年連れ添った仲のような、相手を理解している言葉だ。
例えば、この場にいない夫を語る妻。彼はそうであると確信を持って話進めることに、クロスは表現しようない気持ちに駆られた。
苛つきや怒りではない、悲しみでも憎しみでもまた違う。
この姫と姫が語るもう一人の騎士が長い年月を共にしていることは知っている、気心知れた仲であり意志疎通さえもできる絆があることは自明の理。
時間は戻らないし、自分がいない空白を埋められはしない。故に今を持って彼女と“あいつに負けないぐらい接してみせればいいんだ”。