君の知らない空
でも、
待っていても彼の答えは返ってこない。
痺れを切らして思いきり顔を上げたら、彼は優しい顔をしたまま。ひやりとするような目をして、ふいと背を向けた。
まるで私など知らないと言いたげに。
突き放す背中に再び声を掛ける勇気はなく、私は唇を噛んだ。
その態度は何?
昨日助けてくれたのは、
バッグを取り返してくれたのは、
確かにあなただった。
私の見間違いなんかじゃない。
私に手を差し伸べてくれたのは、
私に掛けてくれた言葉は、
いったい何だったの?
呆然とする私を残して、彼は颯爽と自転車を漕ぎ出す。
もう、これ以上は何も言えない。
自転車を漕ぐ彼の背中が滲んでいく。
取り残された胸の中の疼きは、いつか感じたことがある気がした。