君の知らない空


これを失恋というのだろうか、それとも失意というべきだろうか。


帰宅してベッドに入っても眠れるはずもなく、一晩中もやもやしたモノを抱えたままスッキリしない朝を迎えた。


出社して事務所に入った私の目に飛び込んだのは、計器チームのある机の一角で話している男性陣。


あれは、江藤の席?


江藤を囲んで、数人の男性社員らが何やら話し込んでいる。


そして彼らを遠巻きに眺めている山本さんと野口さん。二人とも、何時になく怖い顔をしている。


何かあったに違いない。


興味はあったが、まずは自分の席に着きたい。それにはあの二人の、オバチャンの前を通らなければ……


「おはようございます」


恐る恐る挨拶して素早く通り過ぎようとしたら、ぐいと腕を掴まれた。


「高山さん、ちょっといい?」

「え?」


手を引いたのは山本さん。
有無を言わせず、私を事務所の外へと連れていく。


まだ、バッグ持ったままなのにぃ……


私の心の叫びが届いたのか、優美がちらりと振り向いた。


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