君の知らない空


私はぐるりと辺りを見回した。
何で目を離したんだろうと、焦りと悔しさが込み上げてくる。


どこかの路地に入ったのかもしれない。


彼が居たはずの場所へと駆け寄り、近くの路地を覗き込んだ。


暗い。
でも、誰かいる。


そこに、確かに感じられる気配。
彼なのかは分からないけど、私は自転車を押したまま路地裏へと入っていった。


空気が変わった気がした。
暗闇が気持ち悪い。
きっと昼間なら、何てことないんだろうけど。


路地裏の中にさらに路地があり、街灯さえ届いてこない。こんな道があったんだと驚かされる。


そんな暗闇の中、何処からともなく賑やかな声だけが聴こえる。だというのに店の灯りが目立たないのは、スナックかクラブなどの暗がりを好む店だからだろう。


次第に不安になっていく。
優美と呑んでたお酒の力もとっくに切れて、素に戻ってきた私は恐怖を感じ始めた。


こんな所で何をしているんだろう。


彼の跡を追ってきたことを、後悔し始めている自分がいる。


微かな声が耳を掠めた。
賑やかな声とは明らかに異質で、聞き慣れないというよりも、決して聞いてはいけないような声。


彼に何かあったのかも……!


胸をぎゅっと締め付けるのは、
危険という言葉。


でも、逃げようとは思わなかった。
本当はまだ少しだけ、お酒が残っていたのかもしれない。


音を立てないように慎重に、路地の傍に自転車を停めた。ぐっと息を殺して、声のする路地裏の奥を覗き込む。



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