君の知らない空
ショッピングモールを離れて、10分ほど歩いた。
大きな通りをひと筋入ると、古い家と新しい家が混在する住宅地が広がる。所々にシャッターの閉まった店があり、歩道と車道の区別のない道路を危な気なく二台の車がすれ違っていく。
この辺りで彼を見かけるのだと、沢村さんは言ってた。
小川さんをよく見かける場所を教えてほしいと言ったら、沢村さんは驚いていた。やっぱり……と思ったに違いない。
でも、もういいんだ。
沢村さんに何て思われても構わない。だって好きとかいう感情の有無は別にしても、彼が気になっているのは事実だから。
桂一には、先に帰るとメールを送信しておいた。まだ何も返事がないということは、桂一は忙しいからだろう。
それにしても足が痛い。
といっても、こんな住宅地に休む場所なんてない。ここまで来たことを後悔なんてするものか、彼を見つけるまでは諦めない。
たまにすれ違うのは車ばかりで、歩行者や自転車なんて見かけない。しかし寂れているという感じは全くなく、どこかに世間話でもしている人の姿があってもおかしくない雰囲気。
本当に彼は、この辺りを走っていたのかなぁ……
もう歩けない。と思っていたところに、小さなパン屋さんが現れた。柔らかな木の温もりを感じる外観は、周りの住宅とは異質で浮いている。
すうっと胸が軽くなるような喜びは、穴場を発見したからという理由だけではない。店先にあるドリンクの自販機と隣にベンチを見つけた喜びでもあった。
迷わず店内に飛び込んだ。有機栽培の材料を使った様々なパンは見た目からも癒してくれる。
適当にパンを買って店を出た私は、店先の自販機でコーヒーを買ってベンチに座り込んだ。