君の知らない空


カフェの通路沿いの席で、たわいない会話を交わしている。
でも気になっているのは、桂一と彼のこと。通路を通り過ぎていく人の中に、彼の姿を探してる。こんなところにいるはずないと言い聞かせながらも。


「高山さんはどうして、うちのジムに来ようと思ったんですか?」


またまた……ドキッとするようなことを、沢村さんはピンポイントで訊ねてくる。
平然とした顔をしてるけど、私に探りを入れてるのか、本当は何かしら知ってるんじゃないかと疑ってしまうじゃない。


「ちょうど帰り道なんですよ、電車で職場から家までの間で便利だから」

「そうなんですね、だったら帰りに寄りやすいですよね、職場はどちらでした?」

「月見ヶ丘、沢村さんはどこに住んでるんですか?」

「私はここからすぐ近くなんですよ、だから自転車で来てるんです。あ……実は小川さんも近くに住んでるみたいで、よく見かけるんですよ」


驚いた。
優美の言ったとおりだ。
彼は霞駅近辺に住んでるって。


「へえ……そうなんですか」


平然と答えたけど、本当はもっと聞きたい。彼とどの辺りで会うのか、それは何時ぐらいになのか、いろいろと。
胸がうずうずしてる。


「でも、最近見かけないんですよ。ジムに来なくなってからは全然……どうしたんでしょうね」


まさか、見つかってしまった?
もし彼が美香の兄を狙っているうちのヒトリだとしたら、美香の兄の言った『大方片付けた』という中に含まれているんじゃないか。


そんなの、絶対にイヤだ。


「沢村さん、お願いがあるんですが……」


迷いもなく、思いが言葉になって出た。



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