君の知らない空
#6 相反する心

◇ 彼のところへ



結局、桂一から連絡があったのは別れてから2時間以上経ってからだった。


私はちょうど帰宅して間もない頃。松葉杖が要らなくなったからと調子に乗って歩き過ぎたようで、足が疼く辛さに耐え兼ねてベッドに潜り込んだところだった。


『急な仕事が入ったから、帰れなかった。本当にごめん』と桂一は平謝りするけど、私も嘘ついて帰ったのだから謝らなければ。互いに『ごめん』と言って許し合った。


人を探していたの?
探していた人は、周さん?
なんて、聞けるはずもない。


まあ、いいかな。
今日は怖い思いもしたけど、いろんな収穫があった一日だったし。


小川亮が無事だということも分かった。
周さんが『近づくな』と言ったということは、無事にいるということに違いないのだから。ひとまず安心した。


夜も更けてきて、眠ろうと思ってたら枕元で携帯電話が鳴った。この音はメールの着信音、沢村さんからだ。一気に眠気が吹き飛ぶ。


実は沢村さんにお願いしていた。
沢村さんが小川亮をよく見かけるという場所の他に、もうひとつ。彼の住所を教えてほしいと。


以前に個人情報云々……と言いながらも、沢村さんは小川亮の名前を教えてくれた。今回も頼めばきっと教えてくれるかもしれないと無理を言ってお願いしてみたら、沢村さんは困った顔もしないで引き受けてくれた。


今日は夕方からの勤務だったらしく、メールには『家に帰ったところです。くれぐれも内密にお願いします!』と書いてある。
『もちろんです! ありがとうございました!』と返信して、住所を確認した。


やはり、周さんと話したパン屋さんの近くに住んでいるらしい。
明日の予定が決まった。



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