君の知らない空
「ちょうどよかった、さっき彼が来たんだけどね。すごい剣幕で……ほんとについさっきなんだけど、そこら辺りで見かけなかった?」
「はい、玄関ですれ違いました。怖い顔してて……何か騒いでたんですか?」
おばさんは眉間にシワを寄せて、大きく頷いた。
「ええ、月見ヶ丘の火事のニュース知ってる? あれね、彼を狙ったものみたいよ。焼けたビルの3階が彼の事務所らしいわ」
「じゃあ、放火っていうことなんですね。誰も巻き添えにならなくてよかったですよね、それも菅野さんの依頼した刺客の人たちがしたんことなんですね?」
「そりゃあ、もちろん。だから菅野さんは昨夜のうちに、いつの間にか退院しちゃったのよ。おかげで、さっき彼が病室の前で大騒ぎしてったのよ。看護師さんたちが止めに入って大変だったわ」
失敗したと分かった菅野は、身の危険を察してすぐに逃げたらしい。それは賢い選択だと思う。
でも、親子喧嘩に一般人を巻き込む危険性があることを分かっていて、菅野は指示しているのだろうか。それとも、菅野の指示ではなく、刺客の独自の判断なのだろうか。
だとしたら、小川亮や周という彼は何て卑劣な人間なんだろう。
「彼は、これからどうするんでしょう? 菅野を探すのですか? それとも刺客を探そうとするのか……探して、どうするんでしょう?」
「菅野を探すと思うけど、まずは雑魚である刺客から片付けるんじゃないかしら。菅野は上手く隠れているでしょうから、刺客を捕まえて吐かせた方が簡単かもしれないわ」
おばさんは胸の前で両腕を組んで、誇らしげに頷いた。ますます自分の推理に酔いしれている。