君の知らない空
彼を探そう。
彼らよりも早く。
私は夕霧駅前に向かった。
さっきまで怖くてたまらなかった高架下の薄暗さも全く気にならなくなっていた。長く感じていた距離も短くさえ感じた。
駅前のロータリーの中央に建つ時計台、その傍に設置された水銀灯が煌々と駅前一帯を照らし出している。真っ白な灯りの下で話し込んでいる人たちが皆、彼を追っているように思えてならない。
この近くにいるはず。
男性が、電話で話していた事を思い出した。
ぐるりと見渡したロータリーに、一台の車が滑り込んでくる。水銀灯に照らし出されたのは、水色の小型車。
桂一の車だ。
気づいた私は、咄嗟に駅の入口の自販機の陰に身を隠した。
桂一も彼を探している。
自販機の陰から恐る恐る覗くと、水色の車の助手席から見覚えのある男性が降りてきた。月見ヶ丘駅の火事の現場で、桂一と一緒にいた桂一の先輩だ。
先輩は荒っぽくドアを閉めて、高架下の方向へと駆けて行く。車の運転席には桂一。
こんなところで会いたくない。
桂一から隠れるように自販機の陰に身を潜めたら、ちょうど駅の改札口が見える。そこには明らかに美香の兄の部下と思われる厳つい男性が二人、改札口を出入りする人を睨むように見ている。
こんな所にも……
背筋がぞくっとした。
いったい何人が、彼を追っているんだろう。
ロータリーへと向き直ったら、ちょうど桂一の車の後ろ姿。駅を離れて、どこへ向かっているんだろう。
桂一の車が見えなくなったのを確認して、私は再び高架下の方へと向かった。
理由はない。
何となく、彼がそっちの方向にいるような気がしたから。